在宅でできる仕事や副業の1つとして、「翻訳」が取り上げられています。
翻訳業の魅力として、主に次のことが挙げられています。
- 単純作業とは異なり、単価が高い
- パソコン1つで稼げるため、初期投資は少なめで始められる
- 在宅で仕事が完結するため、通勤時間が要らず、会社に自分の時間を拘束されない
- 学んだ英語を活かせる、または仕事を通じて英語力も向上する
一方で、どうすれば翻訳者(翻訳家)になれるのか、翻訳の仕事をするためにどんな勉強が必要なのか、よくわからない人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「翻訳の仕事を取るための勉強とは? | 資格はあるの?未経験や独学でも翻訳者になれる?」と題して、翻訳者はどんな仕事をしていて、どうすれば翻訳者になれるのか、勉強法などを現役フリーランス翻訳者の私が解説していきます。
翻訳業の種類・仕事内容
「翻訳」といっても、おおまかに次の3つの種類に分かれます。
①文芸翻訳(出版翻訳)
小説やビジネス書などの書籍を翻訳します。収入は印税やページ数・文字数で決まるなどまちまちです。採用されたら数十万単位で収入が入る一方、求人数が少なく、コンスタントな収入源にするのは厳しい印象です。
ただし、下記2つと異なり、翻訳家の名前も書籍に掲載されるため、自分の翻訳が形になったと一番実感できる分野だと考えられます。
②実務翻訳(産業翻訳)
翻訳業のほとんどがこの実務翻訳です。企業や官公庁などで発生する契約書やマニュアル、webサイトの文章など多岐にわたります。
分野もビジネスや医薬、IT、工業、特許などさまざまで、英語力はもちろん、専門分野の知識もある程度必要となります。またはリサーチによって専門用語を正しく使用し、文章としておかしくないようにすることが重要です。
一般的に、翻訳者として複数の翻訳会社と契約して、コンスタントに仕事をもらうことで収入を獲得します。
③映像翻訳
映像の中のセリフなどを翻訳します。映画の字幕翻訳や、最近はYouTubeなどのSNSの需要も増えています。
映画の翻訳は限られた文字数で、文化の違いなども考慮して意訳できる必要があるため、スキルもセンスも問われます。一方で、SNSや学習動画などの映像コンテンツの増加で、②の実務翻訳に組み込まれるケースも出てきています。
仕事内容はいずれも、原文を英語から日本語、または日本語から英語に翻訳します。もちろん中国語や韓国語など他の言語を使った翻訳もありますが、求人数は英語が一番多くあります。今回は英語を使うことを前提に話を進めていきます。
どうすれば翻訳者になれるのか
翻訳者になるために必要な資格は特にありません(「ほんやく検定」といった翻訳者として実力があることを示す検定などもありますが、仕事獲得の必須条件にはなりません)。そのためここでは、「仕事をお願いしてもよいと客観的に認められたら翻訳者」と定義しておきます。
翻訳実績がないけれど「知人の頼みでたまたま翻訳した」「クラウドソーシングに応募してみたら運よく翻訳の仕事が取れた」は今回除外します。
また、「翻訳会社に就職」「派遣会社に登録して翻訳の仕事を獲得」というケースもあるのですが、こちらも詳細は割愛します。
未経験でも翻訳者になれる方法は主に2つあります。
①翻訳会社と契約を結ぶ
流れとしては、翻訳会社の求人に応募して書類選考→トライアルです。「トライアル」とは、翻訳会社が出す課題を翻訳することで、トライアルに合格することで翻訳者として登録されます。
②コンテストで優勝または入賞する
文芸翻訳のコンテストは、実際の書籍の一部が翻訳課題となっており、優勝者が書籍全体をそのまま翻訳するケースが見受けられます。実務翻訳でも、翻訳会社や翻訳情報サービス主催のコンテストがあります。翻訳コンテストで賞を取れば、そのまま翻訳の仕事を依頼されるケースが多いです。
直接仕事に繋がらなくても、入賞すれば実績として今後の履歴書に書けるため、未経験者は卒業となります。
*コンテストや求人を多く扱っているサイトの最大手は、「アメリア」というサイトです。
未経験や初心者でも翻訳者になれるのか
上記に書いたように、トライアルに合格するか、コンテストに優勝・入賞すれば翻訳者として仕事ができるようになります(*トライアルに合格するケースは、会社によっては最初の数か月は仕事の依頼が来ず、すぐに仕事ができない場合があるので注意してください)。
トライアルの場合、応募要項に「実務経験3年以上」などの縛りがある翻訳会社もありますが、未経験でも応募できる求人はありますし、「探したけど2社くらいしかない!」なんて思ったことはありません。
さすがに一気に10社くらい受けて全落ちしたとなると考えものですが(翻訳会社によって、再挑戦は1年間できないなどの制限があるため)、勉強してから、まずは2~3社応募してみるのが良いと思います。
翻訳者になるための勉強とは?
翻訳者になるための勉強とは、ずばり「翻訳スキルを学ぶ」ことです。
英語が理解できるだけではダメです。抽象的な表現にとどめてしまい恐縮ですが、「原文をなるべく崩さずに、不自然でない訳文にする」スキルが必要です。
また、「仕様書の指示に従う」「特記事項があれば申し送りする」といった、全く知らない人にはハテナ(?)となりそうな翻訳のルールも知る必要があります。
「伝われば何でもいいじゃん!」と考えてはいけません。作者の文章を勝手に変えることになるのと、クライアントの要望を満たさないことになるので、翻訳とは言えなくなってしまいます。
翻訳者になるための具体的な勉強方法について、表にまとめてみました。
誰かに教えてもらう | 独学 | |
方法 | 通信教育や専門学校を受講 | 書籍、雑誌、Webサイト、セミナー参加による情報収集 |
メリット | ・ステップを踏んで学べる ・質問できる ・添削してもらえる ・キャリアサポートも対応してる場合も | ・コストがあまりかからない ・自分のペースで勉強できる |
デメリット | ・コストがかかる ・専門学校は場所が限られている | ・自分の翻訳が正しいのかなど、相談や質問ができない ・要自己管理 |
独学で翻訳者になるケースも多いようです。ただし、
- トライアルに受からなくて困っている
- 独学だと誰にもアドバイスをもらえないから不安
- 最初から誰かに教えてもらって少しでも早く翻訳者になりたい
場合は、通信教育や専門学校を受けることになるかと思います。
通信教育や専門学校を受講する場合は、独学でできないことができるか?を考えて選んだ方が良いです。具体的には、翻訳文の添削や質問できる回数が多いか、履歴書指導もしてくれるか、トライアル不合格の際にアドバイスをくれるかなどが挙げられます。
私が実際にやった勉強方法
私は翻訳者の実態がわからなかったのと、翻訳の添削・質問ができた方が良いと考えて、某翻訳講座を受講しました。
半年間(+アフターサポート3か月)、ほぼ週一ペースでテキスト学習と課題の添削をしてもらいました。その後、翻訳会社に応募するも、3社連続で不合格でした。
「このままではいけない!」と追加で書籍を購入して勉強し直した結果、翻訳会社のトライアルに合格することができました。
*「某」翻訳講座としているのは、正直この講座だけでは翻訳者になれなかったというのが本音だからです(ディスって訴えられたくないので…申し訳ございません)。
学ぶことは非常に多かったので、私だけが翻訳者になれなかっただけだと思いますが。
私が追加で購入した書籍はこちらの2冊です。
1つ目は翻訳スキルについてかなり参考になったのですが(前置詞を動詞的に訳すなど)、非常に古く廃版なんですよね…私も中古を購入しました。
2つ目は訳文の添削を見るという形式で、他の人の訳文を見られることと、トライアルでどんなことを見られているのかが分かるので良かったです。
ただ、翻訳スキルやポイントを体系的には学べない印象なので、1冊目のようなスキルが書いてある本とセット使いが一番有効かと思います。
*私は新品を買いましたが、これも今は中古なんですね…
他の翻訳者さんのブログを見ていくと、この本もよく見かけます。
また、↓のようなジャーナルも情報収集に非常に役立ちます(私も買いました)。
『通訳・翻訳ジャーナル』では、「誌上翻訳コンテスト」も開催しているので、目指すジャンルであれば応募してみると良いかと思います。年4回の季刊誌で、2つ後の号に訳例や解説などが掲載されます。
さらに、有料なので本気で翻訳を仕事にしたい人向けにはなりますが、「アメリア」というサイトは求人情報、コンテスト、スキルアップコンテンツが揃っているのでおすすめです(私も入会しています)。
翻訳力を磨くのに必要な勉強、要らない勉強
翻訳の基本スキルの勉強の他に、英語をはじめとして必要な勉強があります。一方で、翻訳には英語4技能がすべて必要なわけでもないので、要らない勉強もあります。具体的に見ていきましょう。
必要な勉強
文法を理解する
英文を正確に理解するために最も重要です。英文はキホン翻訳されることを想定していないので、1文が非常に長かったり、文章の区切りが分かりづらい場合がほとんどです。その際に文法がわからないと、文章を正確に理解することは非常に難しくなります。
私は、高校時代に使っていた参考書(もちろん現在中古のみ(笑))と、新たに買った『超英文解釈マニュアル』で復習しました。
『超英文解釈マニュアル』はシリーズ物で、私は『超英文解釈マニュアル2』も購入していますが、まずは↑のみでも良いかと思います。
英文法で有名な参考書は『ロイヤル英文法』ですね。他の翻訳者さんも紹介していました。
書籍だと積ん読(買ってそのまま勉強しない)になりそうな方は、メール講座分かる! 解ける! 英文法!を利用するのもありでしょう。
読解力を鍛える、多読に慣れる
文法を理解したら、読解力を鍛えましょう。また、翻訳は1日に何千文字と読むことになる可能性が高いので、たくさんの英文を読むことに慣れていないと正直キツいです。ですので例えば、英字記事を読むことをおすすめします。
海外の大手で有名なのはThe New York Timesです。また、The Japan Timesは日本のニュースの英字記事なので、内容がある程度わかった上で読むことができます。いずれにせよ、まずは興味のある1記事を読んでみることから始めてみましょう。
アプリで英字記事を読むのであれば、『POLYGLOTS (ポリグロッツ)』もおすすめです。
POLYGLOTS (ポリグロッツ) – 英語・英会話学習
開発元:POLYGLOTS inc.無料posted withアプリーチ
私は日本経済新聞も購読しており、毎週水曜の夕刊に、Nikkei Asiaの一部の記事原文とそれを翻訳した文章が掲載されているので、翻訳スキルも学んでいます。
文章作成スキルを学ぶ
読みやすい文章、皆さんは書けますか?聞いておきながら私も絶賛勉強中ですが(笑)、何が読みやすく、誤解のない文章となるのか、スキルとして習ったという人は意外に少ないのではないでしょうか。
英語から日本語に訳すのであれば日本語の文章作成、逆は英語の文章作成スキルを勉強した方が良いでしょう。
ここでは、日本語の文章作成スキルに関する書籍をご紹介します。文章スキルに関する本は腐るほどあるので悩みどころですが、現状、私は主にこの2冊を参考にしています。
最短で翻訳者になるためには要らない勉強
ここまで読んでくださった方は、「勉強すること多くない!?」と感じている人も多いかもしれません…
ただ、現実としてスキルの要らない仕事は単価が安く、逆を言えば単価が高い仕事はスキルが必要です。今回は翻訳を取り上げていますが、プログラミングやwebデザイナーなどもスキルが必要ですよね。
だからこそ、勉強に優先順位をつけたり、取捨選択したりすることが重要です。ここでは、最短で翻訳者になるためには要らない勉強を挙げていきます。
単語の暗記
テストとは異なり、単語は調べることができます。むしろ最適な翻訳文章を作るために、単語はたとえ意味を知っていてもほぼ100%辞書で調べることになると思います。
英会話
スピーキング(英語を話す)能力は翻訳では要らないことは想像に難くないと思います。
リスニング(英語を聞く)能力も基本必要ないと思っていましたが、最近増えている映像翻訳で文字起こしからお願いされた場合は必要です。
また、文字起こしが間違えていないか確認するという観点でも、ある程度聞けた方がいいなと感じました(私も映像翻訳の経験がありますが、そのときはネイティブが事前に文字起こししたものを翻訳しました)。
TOEIC
TOEICは英語のみの問題に回答するテストなので、英語を日本語に(日本語から英語に)変換する翻訳にTOEICは直接必要ありません。
ただし、TOEIC 900などを条件にしている求人がほんの一部あるのと、TOEICは英語の問題を2時間で200問解く苦行なので(笑)、多読・集中力が身につくという観点で、あって損はないくらいの位置づけだと思います。
未経験者や初心者に重要な心構え
ずばり、トライアルやコンテストの応募を先延ばしにしないことです!
最初の応募って緊張しますよね。しかし、そこで勉強ばかりしてノウハウコレクターのままでは翻訳者にはなれません。実際に翻訳コンテストで(良くても悪くても)評価をもらう、翻訳会社に応募して合否をもらうことが一番の勉強になります。
私も翻訳講座を受講後、3社トライアルに落ちたことで今までの翻訳方法を見直し、無事に翻訳者になることができました。いかにはやく失敗し、改善できるかが重要だと思います。
まとめ
「翻訳の仕事を取るための勉強とは? | 資格はあるの?未経験や独学でも翻訳者になれる?」と題して、翻訳者になるための勉強法などをご紹介しました。
翻訳者になるための資格は特になく、トライアルに合格して翻訳会社と契約を結んだり、コンテストに入賞したりすることで、未経験者や初心者でも翻訳者になれます。翻訳者になるために、講座や独学で翻訳スキルなどを学び、コンテストやトライアル(まずは2~3社)に応募してみましょう。行動に移すことが重要です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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