経営者自らが1人で採用を行う
他業務と兼任の採用担当が1人
中小企業やスタートアップでは、よくある状況です。私自身、ひとり採用マーケターとして、「自分がやらなければ何も進まない」と感じながら、手が止まってしまった経験があります。この記事では、そんな過去の反省点を踏まえ、1人でも採用活動を回すための工夫について解説します。
「全部自分でやろうとする」ことが、採用を止める最大の原因
自戒も込めてお伝えしたいのは、採用担当が1人でも回る状態とは、1人で全部やることではありません。
採用マーケティングの主な業務を整理すると、次のようになります。
| 区分 | 内容 |
| 設計 | 発信テーマ、優先順位の決定 |
|---|---|
| 制作 | SNS投稿、記事原稿、資料作成 |
| 運用 | 投稿、告知、問い合わせ対応 |
| 分析 | 数値確認、改善点の整理 |
| 調整 | 社内合意、意思決定 |
これをすべて1人でこなそうとすると、必ず限界が来ます。大切なのは、業務を次の3つに分けることです。
- 判断が必要な部分(自社で必ず担う)
- 作業として切り出せる部分
- 外に出しても問題ない部分
「判断軸」を自分(社内)に持ちながら、実務の担い手は誰でも構わない。究極はこの状態に整えることが、採用を止まらなくするポイントです。
なお、外注や生成AIを使用する際は、会社の守秘義務やルールによって「作業として切り出せる部分」と「外に出しても問題ない部分」に違いが出ます。重要な情報や個人情報は、そのまま渡さないよう事前にご確認ください。
STEP1:生成AIや外注を「最初から」設計に組み込む
社員インタビュー記事の作成を例にとって考えてみましょう。
*表は一例です。
| タスク | Before | After |
|---|---|---|
| 記事のコンセプト策定 | 採用担当 | 採用担当 |
| 写真、デザイン等外注の選定 | 採用担当 | 採用担当(×生成AI) |
| インタビューされる社員の選定 | 採用担当 | 採用担当 |
| 質問内容の作成 | 採用担当 | 採用担当×生成AI |
| インタビューの実施・進行・録音 | 採用担当×社員 | 採用担当×社員+外注(進行・録音) |
| 文字起こし、記事作成 | 採用担当 | 外注または生成AI |
| 記事校正 | 採用担当、社員 | 採用担当、社員×生成AI |
| デザイン含めた記事掲載 | 採用担当 | 外注 |
| SNS等への投稿 | 採用担当 | 採用担当×生成AI |
| アクセス数や読了率等の分析 | 採用担当 | 採用担当×生成AIまたは外注 |
| 応募につながったか分析 | 採用担当 | 採用担当×生成AI |
Beforeは採用担当の負担が大きいことがわかります。採用担当1人の場合、専門知識があれば別ですが、一から学び、考え、アウトプットするのは、一般的には時間がかかりますし、そもそも非現実的です。
生成AIに任せられる業務例
- インタビューの文字起こし
- 記事構成のたたき台づくり
- SNS投稿の複数案出し
- 長文の要約・言い換え
外注に任せられる業務例
- デザイン・画像制作
- 採用広報・記事制作
- 分析・レポート作成
社内で持つべき判断例
- 発信の方向性
- 採用の優先順位
- 止める・続けるの決断
なお、生成AIが本当に力を発揮するのは、採用したい人物像(ペルソナ)や会社の方針が整理されているときです。「採用向けの文章を作って」と曖昧な指示(プロンプト)を出すだけでは、どの会社にも当てはまる凡庸な文章しか出てきません。
*詳細は書籍をご覧ください。
STEP2:成果物を「使い回す」前提で設計する
成果物を毎回ゼロから作ろうとすると、採用活動は必ず息切れします。1つの成果物を複数の場所で活用することを前提にすると、制作コストは下がり、継続性は上がります。
| 成果物 | 使い回し例 |
| 社員インタビュー記事 | SNS投稿用に要約・分解、採用ページの一部として転用 |
|---|---|
| オンラインセミナー | 録画をYouTubeに限定公開、スカウト文面に活用 |
| 社内イベント | レポート記事として公開、会社の雰囲気がわかるコンテンツとして再利用 |
成果物のアウトプットが止まらない会社は、「新規制作」より「編集・再配置・言い換え」を重視しています。1つ作ったら3か所で使う発想を持つだけで、1人でも回せる体制に近づきます。
補足:「業務委託や生成AIは妥協」という思い込みを手放す
「正社員でなければいけない」という思い込みが、採用担当の負担を必要以上に重くしていることがあります。
業務委託は、正社員の代替ではありません。専門性が高い・社内に知見がない・一時的に必要・試してみたい領域では、最初から外注の方が合理的な場合も多くあります。
また、生成AIの使用に批判的な企業・経営者も一定数います。もちろん、機密情報の管理には注意が必要ですが、個人的には使わない手はありません。少なくとも私は、何かに煮詰まって悩んで手が止まるくらいなら、生成AIに尋ねる方が物事は進みます。
STEP3:発信のガイドラインを作り、「毎回ゼロから悩まない」状態にする
「このコンテンツは発信に値するか」という自問自答、あるいは社内調整で止まってしまい、発信ひいては採用活動が途中で止まることがあります。
これを防ぐのが、発信ガイドラインです。発信前に以下の問いを明文化・社内共有しておくだけで、判断スピードは上がります。
- この発信を見たペルソナはどう感じるか
- 社内の人間はどう思うか
- 自社の価値観と矛盾していないか
- 採用感・宣伝感が前に出すぎていないか
ガイドラインがあれば、「この基準を満たしていれば出す」「これは満たしていないから出さない」という判断ができます。毎回ゼロから悩む時間がなくなるだけで、発信の継続率は大きく上がります。
まとめ:1人でも採用が止まらない仕組みのポイント
- 業務を「判断」と「作業」に分解する
- 生成AIや外注を最初から設計に組み込む
- 成果物は使い回す前提で作る
- 発信ガイドラインを作り、毎回の判断コストを下げる
採用担当が1人でも、採用活動を回すことは可能です。必要なのは、気合でも根性でもなく、止まらない設計です。
やってみよう
□ 毎回、発信内容をゼロから考えている→ペルソナや会社の方針を入力の上、生成AIに「発信のネタを10個考えて」と入力してみましょう
□ 作ったコンテンツを1か所でしか使っていない→社員インタビュー記事があれば、小出しにしたり加工したりして、SNS投稿にも転用できます。「転用できるコンテンツが他にないか」を一度考えてみましょう。
□ 外注・生成AIをまだ使っていない →会社の規則上、使用が可能かどうか確認した上で、まず文字起こしかSNS投稿の案出しから試してみましょう。
採用担当1人でも回る仕組みの作り方を、より詳しく知りたい方はこちら:Kindle書籍『はじめての採用マーケティング』
