この記事は
「TOEICって意味あるの?」
「TOEICの点数高くないとダメ?」
と言う人に向けて、
「TOEICの点数高くなくても問題ないけど、TOEICで人生を好転できる可能性は大いにあるよ」
ということを、データとともに解説いたします。
*TOEICにはTOEIC Listening & Reading (L&R) Testと、TOEIC Speaking & Writing (S&W) Testsがあるのですが、一般的に「TOEIC」と呼ばれるものは「TOEIC L&R」のことを指します。この記事でも、TOEIC=TOEIC L&Rとして記載していきます。
TOEICって意味あるの?という疑問の根本的理由
結論から言います。TOEICは、他の資格やテストと違って明確なゴールがないため、人によっては武器にも宝の持ち腐れにもなるからです。例えば自動車免許の資格は、試験に合格する=車の運転ができます。大学の入試は、点数が高い=大学に入学できます。一方でTOEICは、点数の高さが直接就職や昇進に結びつくことはありません。TOEICのスコアが高いから仕事ができるとはなりませんよね。
一方で、グローバル化の加速で、英語ができる人材が求められているのも事実です。企業や団体は英語力を測る必要があるため、信頼性があり、平等に比較しやすい指標が欲しいわけです。ここで、TOEICがよく出てくるのです。
そもそもTOEICって何なの?
認知度が高く、多くの企業や団体で採用されているTOEIC。英語のテストということは多くの方がご存知かと思いますが、具体的にどんなテストなのでしょうか?
TOEICのテスト概要
【内容】
英文を聞いて質問に対する答えを選択する「リスニング」約45分間(100問)と、英文を読んで答えを選択する「リーディング」75分間(100問)の計2時間(200問)のテスト(全部英文のみで構成)。
【テスト形式】
マークシート方式(問題用紙への書き込みは一切禁止)
【テスト結果】
10~990点、5点刻みのスコアで評価(*)
(*)会社員時代、新卒採用の手伝いをすると、5点刻みじゃないTOEICスコアが書かれた履歴書が毎年出てくるのは話のネタになってましたね(笑)
TOEICの特徴
- 特定の文化を知らないと理解できない表現を排除しているので、誰もが公平に受けることができる→世界160か国で実施
(リスニングセクションにおける発音は、アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアを使用) - 知識・教養としての英語ではなく、オフィスや日常生活における英語によるコミュニケーション能力を幅広く測定でき、活きた英語の力を測定できる
→ビジネス英語で広く使われるようになったトレンド用語なども反映されている - 初級から上級まで同一のモノサシで英語力がスコアとして出てくる
→妙に易しすぎたり、難しすぎたりしないよう作成されており、どの回のTOEICを受けたとしても、英語能力が変化しない限りはスコアが一定になるように作成されている。
【情報元】https://www.iibc-global.org/toeic/toeic_program.html
以上のことから、TOEICは英語能力を測る上で、信頼性があり、平等に比較しやすい指標の1つと言えます。また、TOEICは日本で一番知られている英語テストです。ですから、どこで点数を提示しても、「この人英語できるんだ~」と認知されやすいのです。
TOEICで高得点を取るメリットは? | 「高得点」って何点から?
TOEICで高得点を取ると何が良いのでしょうか?そもそも、「高得点」って何点からなのでしょうか。まず、考えられるメリットは以下のとおりです。
- 就職・転職・副業などの仕事獲得で有利になる
- 昇進・昇格に必要な可能性がある
- 海外赴任や海外部署への配属に有利になる
- 大学入試で有利になる
- 全国通訳案内士試験の一部が免除になる
- 自分のコンプレックス克服や自信につながる
挙げたメリットについて具体的に見ていきます。また、それぞれのメリットに対する点数の目安も見ていきましょう。
ちなみにTOEIC L&Rの最新の平均点は、第265回(2021年3月21日 午後)のTOEICテスト(受験者数53,539人)で990点満点中、608点です。
【情報元】https://www.iibc-global.org/toeic/official_data/lr/data_avelist.html
就職・転職・副業などの仕事獲得で有利になる
日本でTOEIC Programを実施・運営する国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)が調査した「英語活用実態調査2019(企業・団体)」によると、回答した企業のうち、採用でTOEICを要件としている、または参考としている企業は(今後導入する可能性のある企業含め)、
新卒採用で55.4%、
英語を使用する部署の中途採用で61.2%
だそうです。また、要件・参考とするTOEIC L&Rの平均スコアは
新卒採用で545、
英語を使用する部署の中途採用で620
だそうです。
TOEICを要件としている企業には、TOEICの点数がないと書類通過すらできない可能性があります。
ちなみに、新卒採用の履歴書では、TOEICスコア600以上だと記載しても問題ないとされています(あまりに低いと書いても減点対象になりかねません)。
また、古いデータではありますが、転職サイトのDODAが行った調査結果で、「TOEICスコア別の平均年収グラフ」が発表されています。
TOEICスコアと年収に相関関係が見られるような結果です。TOEICの点数が高いことが、スキルを持っている・スキルが高いと認識されているのかもしれません。または、スキルの高い人はTOEICの点数も高いのかもしれませんね。
国税庁の「令和元年分 民間給与実態統計調査」によると、正規社員の平均年間給与は503万円ということも考えると、日本人の平均給与を超えたいならTOEIC 600点以上は欲しいところですね。
*このデータはあくまで参考程度にしてください。
また、副業含め、フリーランスで仕事を獲得する際の応募にTOEICが要件となっている場合もあります。こちらはTOEIC 800点以上など高めが多く(最低でも700点くらい)、ほぼ足切り材料となっています。
TOEICの点数が高くないと仕事が全く取れないということはありませんが、TOEICの点数が高いと応募できる数が増えることは間違いありません。
昇進・昇格に必要な可能性がある
「英語活用実態調査2019(企業・団体)」によると、回答した企業のうち、昇進・昇格でTOEICを要件としている、または参考としている企業の%(今後導入する可能性のある企業含め)と、要件・参考とするTOEIC L&Rの平均スコアは以下のとおりです。
昇進・昇格の要件・参考とする (可能性のある)企業(%) | TOEICスコア (平均) | |
係長・ 主任 | 38.0 | 515 |
課長 | 43.4 | 530 |
部長 | 34.2 | 565 |
役員 | 32.2 | 600 |
役員でも平均600点で、TOEIC全体の平均点(608点)程度なので、低めに思うかもしれません。これはつまり、会社の必要点数を超えない人への足切り材料になっている可能性が高いです。TOEICができないから昇進・昇格ができないのは悔しいですよね。
昇進・昇格ができないと年収アップにつながらないのはどこも同じだと思うので、足切りされないよう、勤めている企業が必要とする点数は確実に超えていきたいですね。
海外赴任や海外部署への配属に有利になる
「英語活用実態調査2019(企業・団体)」によると、回答した企業のうち、海外出張・赴任者選抜でTOEICを要件としている、または参考としている企業は(今後導入する可能性のある企業含め)
海外出張者で49.4%、
海外赴任者で60.2%
だそうです。また、要件・参考とするTOEIC L&Rの平均スコアは
海外出張者で620、
海外赴任者で635
だそうです。さらに、海外部門の社員に期待するTOEIC L&Rのスコアは平均690と、これまでの項目に比べて高めになっています。
海外部門の人材は英語のスキルがあり、会社への貢献度も大きいと見越して一般社員より給与が高かったり、海外赴任は福利厚生が手厚かったりする一面もあります。海外に行ったり、海外の顧客と接したりする場合はTOEICの要件が厳しくなって当たり前ですよね。
さらに、ビジネスパーソンへのアンケートで、「海外赴任できる」と回答したTOEICスコア帯は800点以上で50%近くいたのに対し、600~800点未満の人は10%未満でした。海外赴任や海外部署への異動を目指す人は、企業の求める点数よりさらに上の800点以上が目安かもしれません。
大学入試で有利になる
TOEICの点数を要件または参考にしている大学や学部もあります。希望する大学や学部の応募要項をしっかり確認しましょう。TOEICを要件としている大学例は以下の通りです。
- 青山学院大学 国際政治経済学部 一般入試 TOEIC L&R 560点以上
- 立命館大学 経営学部 AO入試 TOEIC L&R 650点以上
全国通訳案内士試験の一部が免除になる
通訳案内士とは、海外から日本を訪れる外国人の方々に付き添い、外国語で観光案内をする方のことです。その中でも全国通訳案内士は、全国通訳案内士試験(国家試験)に合格しないと取れない資格です。この全国通訳案内士試験では、TOEIC L&Rスコア900以上、TOEIC Speakingスコア160以上、TOEIC Writingスコア170以上のいずれかを取得している場合、全国通訳案内士試験のうち、外国語筆記試験(英語)が免除になります。
自分のコンプレックス克服や自信につながる
「外国人に話しかけられたけど、答えられなかった」
「海外旅行は憧れるけど、英語ができないから行ったことがない」
という人は多いのではないでしょうか。
「英語ができなくて恥ずかしい」
「バカにされたくないから、英語から離れて生活している」
なんて思っている人もいるかもしれません。
一方で、英語ができれば
- 海外旅行を気兼ねなく楽しめる
- 海外の人と友達になれる
- 好きなものやゲームのコミュニティに国境を越えて参加できる
- 海外のトレンドや最先端のテクノロジーに関する情報が手に入る
- 英語で交渉して、上司や同僚から一目置かれる
など、今までの自分では考えてもみなかったことができるようになります。
ただ、英語ができなくて怖がっている状況から「いきなり留学して矯正しよう!」と行動できる人は早々いないので、定期的に海外の人と接触できる人以外は、「独学で勉強してみたけど、スキルは身についてるのかな?」と不安になる人が大半かと思います。
そんな時に、自分の英語スキルを数値化できるのがTOEICになります。
神田外語学院のサイトでTOEICスコア帯別の特徴が記載されています。また、日本のTOEICを主宰しているIIBCもレベル別評価の一覧表をリスニングとリーディング別に載せています。この2つを見比べても、総じてTOEIC 600点以上から、ある程度長文も理解できるようになってくるとのことです。
TOEIC平均点も600点くらいなので、まずはそこを目指して、自分の自信に繋げていくのも手かもしれませんね。
TOEICの注意点
TOEICは万能ではありません。次に、TOEICを資格として使う際の注意点をご紹介します。
TOEICスコアに有効期限を設定している企業などがある
TOEICスコア自体に有効期限はないのですが、『公式認定証』という、テスト結果が記載されている証明証の再発行は2年までとなっています。それが転じて、「提出するスコアは現在から2年以内のもの」と設定している企業や団体がありますので、注意してください。
英語を話す・書く能力は別
この記事では、「TOEIC」は「TOEIC L&R」と定義しました。L&RはListening(英語を聞く)とReading(英語を読む)で、英語の4技能の2つしかカバーしていません。TOEIC S&W(英語を話す&書く)というテストが別にあるくらいですので、TOEIC L&Rの点数が高いと英語が話せる、書けるとは限らないので注意しましょう。
具体的にビジネスの場において、英語はメールのやり取りだけ、海外の情報収集だけに使っているならTOEICスコアはある程度参考になりますが、海外の顧客にプレゼンする資料を作成し、発表までするのであればTOEICスコアは参考になりません。
*厄介なのが、TOEIC L&Rの点数が高いと、英語で何でもできると過大評価される可能性があることです。ちゃんとわかっていない人は「英語でプレゼンできないんじゃん(笑)」と勘違いしてくるので注意しましょう。そう言われないために、会社で使う英語の能力を別で磨くのも大事ですね。
日常会話も、英語を聞けるけど話せないとなる可能性が高いので、ある程度聞けるようになったら話す練習も必要です。
今の会社では年収が上がる材料にならない場合がある
TOEICの点数で年収が上がったり、報奨金を出してくれたりする企業もある一方、TOEICの点数が高い、または英語で海外の顧客とやり取りをしていたとしても、英語ができない社員と給与が変わらない企業や部署があるのも事実です。
英語のスキルがあるだけで自分の財産になることは間違いないのですが、給与に反映される人と反映されない人とではやる気が変わると思いませんか(笑)?英語のスキルがあり、TOEICの点数という数字として示せるものがあると、副業や転職で幅が広がるのは確実なので、チャレンジしてみても良いかもしれません。
洋画や洋楽を楽しみたいだけの人には参考にならないかも
TOEICで扱う英語には、いわゆるスラングなどといった砕けた表現はないので、洋画や洋楽を楽しみたいだけであれば、TOEICの勉強はちょっと違うのかなと個人的には思います。
まとめ
今回は「TOEICの点数(スコア)が高いとなぜ良いのか? | 仕事獲得や昇進などのメリットと注意点」というタイトルでお届けしました。
TOEICに限らず、何かに対して「必要かどうか」は人それぞれです。この記事を見てTOEICが必要だと思ったら、少なくとも600点以上からは何かしら武器になるので、目指していきましょう。
また、「何となく英語が必要そう」という理由で英語を勉強している人は、何を勉強すればいいか、どこを目指しているか迷子になり、学習を止めてしまう可能性が高いので、1つのきっかけとしてTOEICを活用してみても良いかもしれませんね。
ただし、「TOEICの点数が高い」ことは、「実際に英語で仕事ができる、会話ができる」ことにはならないため、TOEIC以外の勉強をしたり、違うアプローチに切り替えたりした方がいいでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
コメント