求人を出しているのに、なぜ人が来ないのか
求人を出せば誰かは応募してくる
条件を上げれば人は集まるはず
そう信じて動いてきたのに、応募がない、来ても合わない…そんな状況に悩む採用担当者や経営者は、今とても多い状況です。
それは努力が足りないからでも、会社の魅力がないからでもありません。採用を取り巻く環境が変わったことで、これまで通用していた「待ちの採用」が機能しなくなっただけです。
この記事では、採用が難しくなった理由と、現代に必要な「採用マーケティング」という考え方を、求人媒体との違いを交えながら解説します。
求職者の行動が変わった:「マイナスを避ける」時代の到来
「待ちの採用」が限界を迎えた最大の理由は、求職者の意識と行動が大きく変化したことにあります。
かつては、給与や福利厚生などの「条件」が良ければ人は集まりました。しかし今は、ワークライフバランスや「自分らしい働き方」への関心が高まり、求職者は「条件の良し悪し」よりも「自分に合うかどうか」を深く見極めようとしています。
何より変わったのが、応募前の行動です。求人票を見てすぐに応募ボタンを押す人は、ほとんどいません。転職活動者の約9割が、応募する前に企業のホームページや採用ページを自ら調べ、SNSや口コミまで確認したうえで「この会社で本当に大丈夫か?」と慎重に判断しています。
つまり、「情報がない」こと自体がリスクとみなされます。
どんなに条件が良くても、実際の社風や評価制度、残業の実態などが不透明であれば、「何か裏があるので」「入社後に後悔するかもしれない」と思われ、静かに選択肢から外されてしまいます。今の求職者は、プラスの条件を積み上げるよりも、「マイナス(失敗)を避ける」を優先しているのです。
採用マーケティングと求人媒体は何が違うのか
こうした変化に対応するための考え方が「採用マーケティング」です。一言で言えば、「集める採用」。企業が自ら動き、自社に合う人に気づいてもらい、納得して選ばれるための流れを設計することを指します。
「求人媒体」と「採用マーケティング」には、大きく3つの違いがあります。
届く相手が違う
求人媒体が届くのは「今まさに職を探している人(顕在層)」です。そのため、他社と条件面で横並びに比較されやすくなります。
一方、採用マーケティングは「職をまだ探していない人(潜在層)」にもアプローチできます。優秀な人ほど今すぐ動いていないことが多い。だからこそ、潜在層への接点を持つことが重要です。
伝えられる内容と時間軸が違う
求職者が判断しているのは、給与や業務内容だけではありません。
- 人間関係
- 価値観
- 将来性
ひとつひとつが、人生の選択に関わる要素です。そのため、スペックの羅列では響きません。
求人媒体でもある程度の情報は載せられますが、どうしても限界があります。また、掲載期間が終われば効果もゼロになります。
採用マーケティングは、届ける情報の内容も量も自由度が高く、継続的な発信が可能です。日々の情報発信の積み重ねが、「この会社は成長している」という印象を候補者に与えることもあります。
ゴールの設計が違う
求人媒体のゴールは「応募」であるのに対し、採用マーケティングは「納得して入社してもらうこと」です。
- 応募数は増えたが辞退が多い
- 面接が増えただけで疲弊する
このような状況は、ゴールの設計がずれているサインかもしれません。
また、採用マーケティングを通して築いたコンテンツや候補者リストは、自社の資産として残り続けます。
大企業であれば、すでに世の中に情報が溢れているため、求職者は判断材料に困りません。しかし、知名度のない中小企業の場合、自らの手で「判断材料(情報)」を意図的に提示しなければ、選ばれる土俵にすら立てないのです。
「なんかすごい会社」を目指さなくていい(採用ブランディングとの違い)
マーケティングと聞くと、「会社のイメージを良く見せること」を想像するかもしれません。しかし、採用マーケティングは実態を良く見せたり、バズらせたりすることではありません。
採用ブランディングが「企業イメージを中長期的に定着させる」ことを目的とするなら、採用マーケティングは「今ある等身大の自社の姿を、届くべき人に正しく伝える」ための実務的な設計です。
無理に背伸びをした発信で人を集めても、入社後のギャップで早期離職につながるだけです。大切なのは、自社に合う人を明確にしたうえで(ペルソナ)、その人が知りたい情報を、迷わない導線で届けることです。
候補者が知りたいのは、おおむね次の3つです。
- この会社や働く人は信頼できそうか
- 自分に合いそうか
- この会社で働く未来が想像できるか
この問いに答えられる情報を揃えること。それが採用マーケティングの本質です。
「媒体を増やす」と「導線を作る」は別物
「媒体を増やせば応募も増えるのでは?」と思われるかもしれませんが、半分正解で半分間違いです。
確かに、応募数は増えます。ですが、「採用」には至らないケースが多いのです。実際、求人媒体からの応募は、要件を満たす人が少ない傾向にあります。
一方、自社の採用ページやイベント経由で来た応募者は、事前にしっかり情報を調べ、自分に合うかどうかを確認してから動いています。そのため、採用確度が高い傾向があります。
自社専用の採用ページを作り、コンテンツやイベントからそのページへ誘導するという導線設計こそが、採用獲得への近道です。
中小企業こそ、採用マーケティングが武器になる
「予算がないから無理」という声をよく聞きますが、それは誤解です。採用マーケティングに、大きな予算は必要ありません。
むしろ中小企業には、大企業にはないアドバンテージがあります。
- 意思決定が早い
- 現場の声を拾いやすい
- 変化をすぐ反映できる
これらはすべて、採用マーケティングの実行力に直結します。
また、実際に求職者の心を動かすコンテンツは、磨き上げた企業PRではなく、社員のリアルな声や体験談であることがほとんどです。社長のあいさつよりも、「少し先を歩いている社員の言葉」の方が読まれます。
完璧な戦略から始める必要はありません。小さく試して、改善を重ねるだけで、他社との差は確実につきます。
今日からできる3ステップ
- どんな人に来てほしいのか
- 何を期待し、何を期待しないのか
ここが曖昧なままでは、発信しても誰にも響きません。
- 社員のストーリー
- 事業の背景
- 将来のビジョン
- 失敗談や会社のデメリット
「良く見せる」のではなく、「不安を減らす」発信を意識しましょう。
SNSはアルゴリズムに左右されます。メルマガやLINEなど、候補者とつながれる手段を持つことは、採用における大きな資産になります。
まとめ:一発勝負の採用から、資産として積み上がる採用へ
「待ちの採用」が通用しなくなった理由はシンプルです。求職者が、より慎重に、より多くの材料をもとに判断するようになったからです。
自社が求める人物像を明確にし、その人が「この会社なら安心だ」「ここで働きたい」と思える判断材料を揃えることが、採用マーケティングの第一歩です。
予算も専任担当もいない小さな会社だからこそ、経営者や社員のリアルな声が、求職者にとって最強の判断材料になります。
より具体的な「ペルソナの作り方」、「発信の3つの役割」、「1人でも回る採用の仕組みづくり」などは、Kindle著書『はじめての採用マーケティング~1人でも回る仕組みと、失敗しないための設計図~』で詳しく解説しています。当ブログでも情報を拡充していく予定です。

